「製品の角(カド)が欠けている……」
「表面に、クレーターのような凹みができている……」
成形が終わって金型を開けた瞬間、こんな不良を見つけてガッカリしたことはありませんか?
これは「エアー噛み(エアー・トラップ)」と呼ばれる現象で、ゴム成形において最も発生頻度が高い不良の一つです。
「金型が悪いから仕方ない」と諦めるのはまだ早いです。実は、生地の「置き方」や「形」を変えるだけで、劇的に改善することも少なくありません。
今回は、現場ですぐに実践できるエアー噛み対策を、成形プロセスの視点から解説します。
そもそも「エアー噛み」とは?
エアー噛みとは、「金型とゴムの間に空気が閉じ込められ、そのまま加硫されてしまった状態」のことです。
ゴムが金型の中で流動する際、空気の逃げ場がなくなると、圧縮された空気がゴム表面を押し込みます。
その結果、以下のような見た目の不良が発生します。
- 凹み(ディンプル): 表面にえくぼのような丸い凹みができる。
- 欠け(ショート): 末端部分にゴムが行き渡らず、欠損している(空気が邪魔でゴムが入っていけない)。
- 焼け(ディーゼル燃焼): 圧縮された空気が高温になり、ゴムが黒く焦げる。
なぜ空気は逃げない?エアー噛みの3つの原因
1. 生地の形と置き方が悪い(プリフォーム不良)
これが一番の原因です。
例えば、平らな金型に対して、平らな板状のゴムを置いたとします。
プレスした瞬間、ゴムの「外周(端っこ)」が先に金型に触れてシール(密閉)されてしまうと、中心にある空気は逃げ場を失い、製品の真ん中にエアー噛みが発生します。
2. ガス抜き(バンピング)不足
加硫中に発生するガスや、挟まった空気を逃がすために、プレス機を何度か開閉する動作を「バンピング(息抜き・ガス抜き)」と言います。
この回数が少なかったり、タイミングが早すぎたりすると、空気が抜けきらずに噛み込みます。
3. 金型の「エアベント」詰まり
金型には通常、空気を逃がすための微細な溝(エアベント)が掘られています。
ここが汚れや離型剤のカスで詰まっていると、空気が抜けず、毎回同じ場所にエアー噛みが発生します。
現場で直せる!エアー噛みの具体的な5つの対策
金型修正(高コスト)をする前に、まずは現場の工夫(低コスト)で対策しましょう。
対策1:生地の形を「山高(ピラミッド)」にする
「空気は内側から外側へ押し出す」のが鉄則です。
金型に置くゴム生地(プリフォーム)の形状を、中央が高く、端が低い形状(山型・ドーム型)に整形してください。 こうすることで、プレスした際に「中心 → 外側」の順にゴムが接地していくため、空気を自然に外へ追い出すことができます。
逆に、最もやってはいけないのが「凹型の生地」や「平らすぎるシート」を置くことです。
対策2:置き場所や向きを変える
複雑な形状の場合、あえて「エアーが抜けやすい方向」に生地を置きます。
また、複数の生地を重ねて置いている場合、生地と生地の間に空気が入らないよう、しっかり密着させるか、一体化させてから投入します。
対策3:バンピングの「回数」と「高さ」を調整する
バンピングの設定を見直します。
- 回数を増やす: 通常1回のところを2回、3回に増やしてみる。
- タイミングを遅らせる: ゴムが少し流動し始めてから開閉することで、奥に入り込んだ空気を逃がす(ただし遅すぎると製品が割れるので注意)。
- ストローク(高さ): ほんの数ミリ開くだけでなく、しっかり空気が入れ替わる高さまで開いているか確認する。
対策4:加硫速度を少し「遅く」する
スコーチ対策とも関連しますが、ゴムが硬くなるのが速すぎると、空気が抜ける前に流動が止まってしまいます。
配合で加硫速度(tc10など)を少し遅く調整し、「ゴムが柔らかい時間」を長く作ることで、空気が抜ける余裕を与えます。
対策5:金型の掃除とベント追加
特定の位置で必ず噛む場合は、その場所のエアベントが詰まっている可能性があります。
金型洗浄を行い、それでも直らない場合は、その「噛む場所」に新しくエアベント(逃げ溝)を追加工することを金型業者に依頼します。
- 真空成形機の検討: どうしても解決しない場合、金型内を真空ポンプで引いてからプレスする「真空成形機」の使用が最終手段となります。
間違いやすい!「ボイド(内部気泡)」との違い
「エアー噛み」とよく混同されるのが、製品を切断した時に中にある穴、「ボイド(す)」です。対策が真逆になることがあるため注意してください。
| 用語 | 状態 | 主な原因 | 対策の方向性 |
| エアー噛み | 表面の凹み・欠け | 物理的な空気の巻き込み | ガス抜き強化、置き方改善 |
| ボイド | 内部の空洞・気泡 | 加硫圧力不足、水分の揮発 | 圧力を上げる、材料の乾燥 |
「表面が綺麗ならOK」ではなく、内部の気泡も問題になる場合は、材料の乾燥状態や成形圧力(プレス圧)もチェックが必要です。
まとめ
エアー噛みは、ゴムと空気の「場所取り合戦」です。ゴムが勝つように誘導してあげましょう。
- 基本原理: 空気は「内側から外側へ」追い出す。
- プリフォーム: 「真ん中を高く」して、中心から先に金型に当てるのがコツ。
- バンピング: 回数やタイミングを調整し、確実にガスを抜く。
- 金型: エアベントの掃除をサボらない。
もし明日、エアー噛みが出たら、まずはハサミを持って「生地の形(置き方)」を変えてみてください。「四角いゴムを、丸めて真ん中に置く」。たったそれだけで、嘘のように不良が消えることがあります。
