「先輩の配合レシピ通りに作ったのに、自分が練った時だけ表面が白くなる……」 「テスト室ではうまくいったのに、量産機で練ったらブルームが出た」
こんな不思議な現象に直面したことはありませんか? 配合表(レシピ)に間違いがない場合、その原因は十中八九「混練り(ミキシング)」のプロセスにあります。
ゴム配合において、薬品の計算値はあくまで「全体が均一に混ざっていること」が大前提です。ここが崩れると、すべての計算が狂ってしまいます。
今回は、配合設計者も現場オペレーターも知っておくべき、ブルームを防ぐための「混ぜ方の鉄則」を解説します。
なぜ「混ぜ方」が悪いとブルームするのか?
結論から言うと、「分散不良(混ざりムラ)」が起きているからです。
例えば、ゴム100に対して硫黄を1.0入れるとします。 全体として1.0入っていても、よく混ざっておらず、ある部分だけ濃度が2.0や3.0になっている場所(ダマ)があったらどうでしょうか?
その「濃い部分」では、ゴムが抱えきれる限界(溶解度)を超えてしまうため、そこを起点に薬品が析出し、白い粉となって現れます。これが分散不良によるブルームの正体です。
分散を良くする「投入順序」の黄金ルール
分散不良を防ぐために最も重要なのが、薬品を入れる「順番」です。適当に入れてはいけません。
1. まずは「素練り」でゴムをほぐす
料理で言う「下ごしらえ」です。 薬品を入れる前に、ゴム(ポリマー)だけをしっかりと練り、分子を切断して柔らかくします。
- なぜ重要?: ゴムが硬いままだと、薬品が入っていかず、表面で滑ってダマになりやすいからです。
- 目安: ゴムがロールにスムーズに巻き付き、表面に艶が出るまで行います。
2. 「溶けにくいもの」から先に入れる
基本的には、分散しにくい粉体(酸化亜鉛など)や補強剤(カーボン・シリカ)を先に投入し、高いせん断力(練る力)でゴムの中に押し込みます。
- オイルのタイミングに注意: オイル(軟化剤)を先に入れると、ゴムが滑ってしまい、粉体がうまく混ざらなくなります。「粉を入れて、少し馴染んでからオイル」が基本です。
3. 加硫剤・促進剤は「最後」かつ「低温」で
硫黄や加硫促進剤は、必ず最後に入れます。 理由は2つあります。
- スコーチ(焼け)防止: 摩擦熱が上がった状態で入れると、練っている最中に加硫反応が始まってしまうから。
- 分散の確保: 柔らかくなったゴムの最後にサッと混ぜ込むことで、熱履歴を最小限に抑えます。
ロール作業のテクニック:「薄通し」の効果
オープンロールを使って仕上げる場合、分散を劇的に良くするテクニックが「薄通し(タイトニップ)」です。
「薄通し」とは?
ロールの間隙(ニップ)を極端に狭くし(例:0.5mm〜1mm程度)、ゴムを紙のように薄くして通す作業です。
- 効果: ゴムに強力な圧力がかかり、ダマになっていた薬品の凝集(塊)が粉砕されます。
- 回数: 仕上げの前に、左右交互に3〜5回程度通すと効果的です。これだけで肌艶が全く変わります。
切り返し(切り戻し)を行う
ゴムがロールに巻き付いている状態で、カッターを入れてゴムを折りたたみます。 これにより、左右や内側・外側のゴムが入れ替わり、均一化(ホモジナイズ)が進みます。
プロのアドバイス: ただ漫然と回しているだけでは混ざりません。「薄通し」でダマを潰し、「切り返し」で均一にする。この意識を持つだけでブルームは減ります。
温度管理:熱すぎても冷めすぎてもダメ
混練り中の「ゴムの温度(生地温度)」も重要です。
加硫剤投入時の「危険温度」
硫黄や促進剤を入れる際、ゴムの温度が高すぎると、その瞬間に一部が反応してしまい、ブツブツとした核(ゲル)ができます。これが後にブルームや物性低下の原因になります。
- 目安: 一般的には80℃〜90℃以下に下がってから加硫剤を投入するのが安全圏です。
- 対策: バンバリー(ニーダー)から出した直後の熱いゴムにはすぐに入れず、一度ロールで冷やしてから投入しましょう。
まとめ:良い練りが「最高の配合」を作る
今回は、配合ではなく「練り」の観点からブルーム対策を解説しました。
- 原因: 配合が正しくても、ダマ(分散不良)があればそこから吹く。
- 手順: まずしっかり「素練り」し、粉は「滑らせないように」入れる。
- 技術: 仕上げの「薄通し」は、分散向上の特効薬。
- 温度: 加硫剤を入れるときは、必ずゴムを冷ましてから。
「配合計算は完璧なのに……」と悩んだら、一度現場に降りて、「硫黄を入れる時のゴム温度」や「ロールの薄通し回数」を確認してみてください。 ほんの少し手順を変えるだけで、驚くほどきれいなゴム生地に生まれ変わるはずです。

