「EPDM製品を作ると、なぜかいつも白くなる……」 「汎用ゴムと同じ感覚で配合を組んだら、翌日には粉まみれになっていた」
耐候性や耐オゾン性に優れ、自動車のウェザーストリップや電線被覆などに広く使われるEPDM(エチレンプロピレンゴム)。非常に便利なゴムですが、配合設計者にとって「最もブルームに悩まされるゴム」と言っても過言ではありません。
前回は「ブルームの基礎」を解説しましたが、今回はEPDMに特化した原因と対策を深掘りします。なぜEPDMばかりが吹くのか、その理由とプロの処方箋を公開します。
なぜEPDMはこれほどブルームしやすいのか?
EPDMが他のゴム(NRやSBRなど)に比べて圧倒的にブルームしやすいのには、明確な理由があります。
1. 「非極性」のゴムであるため
EPDMは化学的に「非極性(電気的な偏りがない)」のゴムです。 一方で、加硫促進剤や老化防止剤などの多くの配合剤は「極性」を持っています。
「水と油」の関係のように、非極性のEPDMと極性のある配合剤は、そもそも仲が良くありません(相溶性が悪い)。 そのため、少しでも許容量を超えると、すぐに配合剤がゴムから追い出されて表面に出てきてしまうのです。
2. 充填剤・オイルを大量に入れるため
EPDMは他のゴムに比べて、フィラー(充填剤)やプロセスオイルを大量に混ぜ込むことができる(高充填が可能)という特徴があります。
大量の副資材が入ることで、ゴムの中はすでに満員電車状態。そこに薬品を入れようとしても「座る席がない」状態になりやすく、結果としてブルームにつながります。
EPDMで特に注意すべき「2大犯人」
EPDMの配合でブルームの原因となりやすいのは、主に以下の2つです。
犯人①:ステアリン酸(滑剤・加硫助剤)
多くのゴムで当たり前に使われる「ステアリン酸」ですが、EPDMに対する溶解度は極めて低いです。
通常、天然ゴムなら1.0〜2.0phr入れても問題ないことが多いですが、EPDMの場合は0.5〜1.0phr程度でも飽和してしまうことがあります。「とりあえず1.0phr入れておこう」という手癖が、ブルームの原因になります。
犯人②:硫黄と加硫促進剤(特にチアゾール系)
EPDMは主鎖に二重結合を持たない(または少ない)ため、加硫速度が遅くなりがちです。 それを補うために、加硫促進剤を多量に入れたり、硫黄を増やしたりしがちです。
しかし、前述の通り相溶性が悪いため、加硫速度を上げようと薬品を盛れば盛るほど、未反応の薬品が残留し、ブルームのリスクが跳ね上がります。
プロが教える!EPDMのブルーム対策テクニック
では、具体的にどうすればよいのでしょうか。EPDM配合の現場でよく使われるテクニックを紹介します。
対策1:PEG(ポリエチレングリコール)を添加する
これがEPDM配合における「魔法の粉」です。 PEG(分子量4000番などが一般的)を少量添加することで、以下の効果が期待できます。
- 極性の橋渡し: 極性を持つPEGが、非極性のEPDMと極性の配合剤(フィラーや促進剤)の間を取り持ち、なじませてくれます。
- 加硫促進効果: 加硫を早める効果もあるため、結果として残留する未反応物を減らせます。
ポイント: 多くの現場で、EPDM配合には「PEG」を1.0〜2.0phr程度添加するのが定石となっています。
対策2:ステアリン酸亜鉛への置き換え
ステアリン酸単体だとブルームしやすい場合、一部または全部を「ステアリン酸亜鉛」などの金属石鹸に置き換える、あるいは併用することで改善する場合があります。
また、そもそもステアリン酸の量を必要最小限(0.5phr以下など)に絞る勇気も必要です。加工性(滑り)が不足する場合は、ステアリン酸以外の加工助剤を検討しましょう。
対策3:加硫促進剤の組み合わせを変える
特定の促進剤を大量に入れるのではなく、2〜3種類を組み合わせて**「相乗効果」**を狙います。
- 単独で2.0phr入れるとブルームする。
- A剤 1.0phr + B剤 1.0phr なら、それぞれの溶解度枠を使うためブルームしにくい。
特にEPDMでは、チアゾール系(M、DM)とチウラム系(TT、TRAなど)、ジチオカルバミン酸塩系(BZ、PZなど)をバランスよく組み合わせることが重要です。
まとめ:EPDM攻略の鍵は「入れすぎない」と「仲介役」
EPDMのブルーム対策について解説しました。
- EPDMは「非極性」なので、そもそも薬品と混ざりにくい。
- ステアリン酸の入れすぎには特に注意する。
- PEG(ポリエチレングリコール)を活用して、相溶性を高めるのがプロの常套手段。
「EPDMだから白くなっても仕方ない」と諦める必要はありません。PEGの添加や、促進剤の組み合わせを見直すことで、黒く艶のある美しい製品を作ることは可能です。
ぜひ次回のテスト配合で、「ステアリン酸を少し減らして、PEGを追加する」を試してみてください。

