【NBR編】耐油ゴムのブルーム対策!ニトリル量と「硫黄」の深い関係

ブルーム対策

「Oリングの表面に白い粉が吹いて、シール不良が起きた…」 「耐油性を上げようとグレードを変えたら、急にブルームし始めた」

耐油性ゴムとして最もポピュラーなNBR(ニトリルゴム)。 安価で扱いやすいゴムですが、実は配合設計者にとって「あちらを立てればこちらが立たず」という悩ましい性質を持っています。

今回は、NBR特有のブルームの原因である「ニトリル量(AN量)と相溶性」の関係と、その解決策について解説します。

NBR配合の落とし穴:「ニトリル量」の壁

NBRのブルームを語る上で避けて通れないのが、「アクリロニトリル含有量(AN量)」です。

ご存知の通り、NBRは「AN量」が多いほど、耐油性が高くなります(ハイニトリル)。逆に少ないと耐油性は下がりますが、耐寒性が良くなります(ローニトリル)。

「耐油性が高い」=「薬剤が溶けにくい」?

ここが初心者がハマりやすいポイントです。

  • AN量が多い(ハイニトリル): 極性が非常に高い
  • AN量が少ない(ローニトリル): 極性が比較的低い

一般的に使われる「硫黄」や一部の加硫促進剤は、極性が低い(非極性)性質を持っています。 つまり、耐油性を上げようとしてハイニトリルのNBRを選ぶと、ゴムと硫黄の「極性の差」が広がり、硫黄がゴムの中に溶け込めなくなるのです。

「油に強い(油を弾く)ゴムは、油っぽい性質の薬剤とも仲が悪い」と覚えると分かりやすいでしょう。これが、NBRで硫黄がブルームしやすい最大の理由です。

NBRで特に注意すべき2つのブルーム要因

1. 硫黄の吐き出し(サルファーブルーム)

前述の通り、特に中高ニトリル〜高ニトリルのNBRを使う場合、硫黄の溶解度は極端に低くなります。

汎用ゴム(NRやSBR)と同じ感覚で硫黄を1.5〜2.0phr配合すると、高確率でブルームします。NBRの場合、常温での硫黄の溶解度は非常に低く、グレードによっては0.5phr程度でも危険水域に入ることがあるのです。

2. 老化防止剤とワックスの過剰添加

NBRの弱点は「オゾンに弱い」ことです。 そのため、亀裂を防ぐために老化防止剤やワックスを多めに入れたくなります。

しかし、入れすぎれば当然ブルームします。特にワックスは、NBRの使用環境(温度)に合った融点のものを選ばないと、「夏場は溶けてベタベタ、冬場は真っ白」というトラブルを引き起こします。

プロが実践する!NBRのブルーム対策テクニック

NBRのブルームを止めるには、硫黄の使い方を根本から見直す必要があります。

対策1:不溶性硫黄(インソリュブルサルファー)を使う

EPDM編でも触れましたが、NBRでも不溶性硫黄は非常に有効です。 ゴム中での移動(マイグレーション)が起きにくいため、表面への析出を物理的に抑え込むことができます。

注意点: 不溶性硫黄を使っても、一度加硫温度まで上がって冷えると、普通の硫黄に戻ってしまいます。「未加硫ゴム(生地)のブルーム対策」として有効です。

対策2:「硫黄供与体」を使って硫黄を減らす

これがNBR配合のプロがよく使うテクニックです。

単体の「硫黄」を入れるのではなく、「硫黄を含んだ加硫促進剤(硫黄供与体)」を使って架橋させます。 例えば、TMTD(チウラム系)やDTDMなどの薬剤は、加硫時に硫黄を放出します。これらを使えば、単体の硫黄配合量を減らす(あるいはゼロにする)ことができ、劇的にブルームを減らせます。

  • EV加硫(無硫黄・低硫黄加硫): 耐熱性も向上するため、NBRには一石二鳥です。

対策3:相溶化剤(可塑剤)の工夫

NBRは可塑剤(可塑剤)を多く使うゴムです。この可塑剤を、薬剤の分散を助ける「溶媒」として活用します。

極性の高い可塑剤(エステル系など)はNBRとの相性が良いですが、その中でも「配合剤をよく溶かしてくれる可塑剤」を選ぶことで、ゴム全体での薬剤の許容粉量を底上げすることができます。

まとめ:NBRは「耐油性」と「溶解度」のバランスで決まる

NBRのブルーム対策について解説しました。

  • 原因: 耐油性を高める(AN量を増やす)と、硫黄が溶けにくくなる。
  • 硫黄の限界: 高ニトリルでは、少量の硫黄でもブルームするリスクがある。
  • 解決策: 単体の硫黄を減らし、「硫黄供与体」を使った加硫系(EV加硫など)に切り替えるのがベスト。

もし、今の配合で「高ニトリルNBR + 硫黄 1.5phr」のような組み方をしていてブルームに悩んでいるなら、すぐに「硫黄を0.5phr以下に落とし、その分TMTDなどの促進剤を増やす」テストをしてみてください。

驚くほどきれいで、耐熱性も高い製品に生まれ変わるはずです。

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